キリンカップサッカー 日本-ユーゴスラビア

キリンカップサッカー 日本-ユーゴスラビア


試合開始の時点で、主審の権威はすでに完全に失墜していた。


日本競技者の服装:(上から。以下同)
青、白、青。

ユーゴスラビア競技者の服装:
白、青、白。

日本ゴールキーパーの服装:
黒、黒、黒。

ユーゴスラビアゴールキーパーの服装:
黒黄、黒、黒。

審判団の服装:
黄黒、黒、黒。

フィールドプレーヤーの服装は完全に重なっていて、両ゴールキーパーと審判の服装も完全に重なっている。
両チームフィールドプレーヤーの服装をさらによく見てみれば、背番号の縫い付けの外側に赤いラインが入っているところまで、まるでそうあつらえたかのように一緒だった。


よけいな修辞は必要無いだろう。
コーナーキックのときのペナルティーエリアはまるで市松模様の万華鏡のようであったとだけ言えば、もう十分だ。
ゴールキーパーは反対側にいるからよいというものでもない。ゴールキーパーも状況によっては前に出て攻撃に参加することもある。
おまけに、これもまた審判と合わせたかのように色が重なっている。


ユニフォームの色は、たいていの場合両チームの協議で事前に決められている。その間に入って調整するのは大会本部だ。いちいち確認していないが、この試合では、おそらくそれは日本サッカー協会だろう。

つまり、主な責任は事前の協議で間に入った日本サッカー協会にある。
協会の国際試合運営能力のなさを世間に晒したお粗末な試合だったと言える。

FIFA公認の国際Aマッチを主催させてこのザマだ。
本当に、来年この国でW杯が行われるのであろうか。


審判団をどこが呼んだのかはちょっと分からない。本命は日本サッカー協会の要請によりアジアサッカー連盟から派遣された、というところだが。

主審はこの色の取り合わせについて試合前に何も違和感を感じなかったのだろう。
僕がそう推測するのは、審判の服装が試合時間を通して替わることがなかったからである。

例えば、94年W杯アメリカ大会コロンビア-アメリカ戦には、競技者と審判の服装が紛らわしい、と、試合前半に時計を止めて審判団が着替えをしたシーンがある。

なんらかの事情で競技者の服装を替えることは不可能だったとしても、せめて審判だけは、試合前にとは言わないまでも、たとえばハーフタイムにでも、服装を替えることができたはずだ。
必要だと感じたら、別の審判服を用意するよう急遽本部にリクエストすることもできたはずだ。

ついにそういうシーンがこの試合で見られなかったのは、少なくとも、彼が試合前にはその状況に何も危機感を感じなかったからだ。
こんな色の取り合わせでの試合開始を認めた時点で、すでに国際主審失格である。
彼のおかげで、キリンカップの権威は大きく失墜した。
もっとも、キリンカップなどその程度の大会なのだと言ってしまえばそれまでだが。

分かりやすく整理して言えば、事前の協議でしくじったのは大会本部で、その失敗をフォローできなかったのは主審である。
どちらもお粗末だった。


主審:シンガポール人某。

彼の技術についてはコメントする気にならない。

簡単に言って、自分の近くでの反則は取り、遠いと流すという印象だった。
その一方で、主審から同じような距離での違反に対する判定の一貫性もなかった。
ポジショニングもおかしかった。運動量にも問題があった。
アドバンテージとノーファールのゼスチャーも意味不明だった。
警告すべき場面で警告を逃すこともたびたびだった。
セットプレー前のおかしなタイミングで再三試合を止めていたので、実質的な競技時間も短縮された。
本当に、誰が呼んだんだ?こんなヤツ。

ファウルへの判定基準、ポジショニング以外の点についてだけ指摘しようと思う。

前半5分。
森島がファウルを受ける。
遠くにいた主審は強い調子の笛を複数回吹いてユーゴスラビア競技者に近づき、口頭で注意した。

前半6分。
ユーゴスラビアのコーナーキック。ボールをプレースしたストイコビッチに、主審はわざわざ近づいて何かを言いにいった。
何を言ったのかは分からない。早く蹴れとかそんなことだろうと思うが、早く蹴って欲しいなら放っておいたほうが早い。自分自身がコーナーキックのときに取りたいポジションまで戻るのもロスタイムになる。
権威を示そうとして無駄骨に終わっただけだった。

前半14分。
ユーゴスラビア右の競技者がプレーが止まってからボールをおもいっきり看板にぶつけた。
これこそ、すぐに口頭で注意しておくべきところだった。そして、その競技者の顔と背番号はしっかり覚えておく。
もちろん、警告してもいい。

前半17分。
ユーゴスラビア5番競技者が負傷して、自力でフィールドの外に出る。
競技規則に厳密に従えば警告せざるを得ない場面。
しかしまあ、それではあまりにもかわいそうだから、フィールドの外に出ようとして主審のほうを見る余裕すらなさそうな感じを見かけたら、勝手に主審のほうから「出ろ」と合図をその背中に送ってしまう、という抜け道もないことはない。
主審がそういう仕種をする雰囲気があるかと期待して見ていたが、この競技者がフィールドの外に出ようとするところでテレビはフィールド手前側の絵に切り替わってしまったので、映像からはなんとも言えなかった。
主審の気がつかないうちに彼がフィールドの外に出てしまっていたとしたら、かわいそうだが警告せざるを得ない。

前半22分。
ユーゴスラビアフリーキック。
主審は笛で時計を止めてから、再開までずっと笛を持ったほうの手を挙げ続けている。
これ以降、時計を止めたすべてのセットプレーで彼はそうだった。おそらく、そういうスタイルなのであろう。

前半25分。
相手をひっぱる違反をした競技者を罰しようとして主審は笛を吹こうとするが、それをやめて両手を前方に伸ばした。
アドバンテージの合図と解釈した。

前半31分。
違反と思われるプレーに対し、主審は下で手を交差させた後、両手を前へ出した。
これもアドバンテージの合図なのだろうか。

前半45分。
ここでもコーナーキック時に笛でプレーを再度止め、ペナルティーエリア内の競技者に何かを言いにいっている。
別に何も言う必要はない。違反した競技者が出たらそのときに正しく処罰すればいいだけだ。事前に口頭で注意する必要はない。
見せものプロレスのレフリーのように小うるさいが、その実まるで効果がないところまで見せものプロレスのレフリーのようだ、と思った。

彼は、他の何かのセットプレーのときにも同様の行為をしていた。
実質的な競技時間を減らすだけの、質の悪い行動だった。

後半3分。
違反かと思われるプレーがあり、主審は右後ろポケットに手をつっこむが何もせず、そのままプレーを続けさせた。
何かに迷ったのだろうか。それとも、プレーとはまるで関係ない個人的な事情か。
時間的に言って、例えばブッキング用の鉛筆の所在がちょっと気になったとか、そういうことかもしれない。

後半8分。
右で突破した服部がゴールラインを越えるか越えないかというボールをセンタリング。ボールが空中にあるときに主審がプレーを止める合図を笛でしたが、逆サイドにいた日本競技者がシュートしておもいっきりフかした。おとがめなし。
遅延行為とみて警告してもおかしくなかった。最低でも口頭で注意だろう。甘い。

後半14分。
稲本がユーゴスラビア競技者のタックルをくらい転倒。主審は流した。そのあと、溯って警告することもなかった。
明らかに警告に値するプレーだった。

後半20分。
A1がオフサイドラインのキープを放棄し、旗を揚げてセンターライン付近にむかい必死になって何かをアピール。しかし何故か急に止めて、ラインに戻る。主審はそれに気がついた様子はなかった。
少なくとも副審とのコミュニケーションに問題があった。
あれに気がつかないようではヤバい。
副審が「ラインズマン」ではなくて「副審(assitant referee)」と呼ばれるようになったのは、その役割がボールが外に出たかどうかを判定するだけに留まらなくなったからである。

第6条 副審
任務 副審は2人任命される。副審の任務は主審の決定に従いつつ、次のことを合図する:
・主審の見ていなかった不正行為やその他の出来事が起きたとき
・違反が起きたとき、その行為に副審が主審より近いときはいつでも(特定の状況下で、違反がペナルティーエリア内で起きたときを含む)

副審からのアピールを見逃したということは、彼自身が何かの違反を見逃したということに等しい。

後半25分。
稲本のシュートは右に逸れる。主審はゴールキックで再開と合図。
テレビではGKが触っているように見える。どうせ、位置が悪くて主審にはよく見えてなかったのだろう。その具体的なポジショニングは分からない。

後半26分。
スローインで試合再開というときにそこでまた試合を再度止めて、ユーゴスラビア競技者の交代を認める。
おかげでまたよけいに時間を食った。通常認められないタイミングだった。

後半33分。
ユーゴスラビア競技者の足を高く上げての「危険なプレー」。直後にユーゴスラビアの別の競技者がボールを大きく蹴っ飛ばす。
絶対に遅延行為で警告だ。

後半38分。
ユーゴスラビアの攻撃。ペナルティーエリア正面やや左手前でユーゴスラビア競技者が反則を受けたように見られた。主審はなんだかあやしい動作。そのあとユーゴスラビアがボールをキープし続け、そのちょっとあとに、反則を受けたかどうだかというシーンがまたあり、そこではじめて主審は笛。その時の動作は、バスケットボールのトラベリングのような合図。後のほうの場所でユーゴスラビアボールのセットプレーで試合再開。

この試合の主審最大の見どころ。完全に訳が分からない。

あのトラベリングのような動作が何を意味していたのか、おそらく主審以外は誰も分からなかったろう。
多くの競技者が、「何が起こったのだろう。」という雰囲気であった。
最初僕は、「アドバンテージを採用したが、巻きもどす。」という意味かと思った。
それにしてはおかしいな、アドバンテージの合図はなかったはずだが、と思っていると、後のほうの違反の場所で試合を再開した。
前のほうの「違反のようなシーン」で何事もなかったのならヘンな合図は必要ないし、それが違反であったのなら、そのときにアドバンテージの合図がなければならなかった。
あるいは口頭で主審がそう言って近くの競技者には伝わっていたのかもしれない、とは思うが。

にしても、あのトラベリングのような仕種は何のためのものだったのだろう?
「アドバンテージを採用していたが、この場所で新たなファウルがあったのでここから試合再開」だったのだろうか?
たとえそうだとしても、誰にも伝わらないようなややこしい合図はしないほうがよい。

後半49分。
ユーゴスラビア競技者がヘディングシュート。ボールは右のポストを叩き、そのままゴールラインを割る。
主審の位置は推定40yd。ポジショニングについては書かないと最初に言ったが、あまりにもひどいのでやっぱり書かせてもらう。話にならない。


副審A1:
主審とのコミュニケーションにおいて重要な問題があった。
ラインについても甘いと感じた。

前半42分。
小野がコーナーキックを蹴るシーンで、ユーゴスラビア競技者に対し、10yd離れるように手で指示している。

後半3分。
オフサイドの合図。
彼の位置はラインより前方。
ラインキープがおかしい。

後半20分。
A1がオフサイドラインのキープを放棄し、旗を揚げて振りながらセンターライン付近に近づいて必死になって主審に何かをアピール。しかし何故か急に止めて、ラインに戻る。主審が気がついた様子はなかった。
あきらめた、という雰囲気だった。何があったのかは分からないが、あきらめてはいけない。少なくとも主審とのコミュニケーションに問題があった。
本当に来年W杯が開催される国で行われている国際Aマッチなのか、と疑いたくなるシーンだった。


副審A2:
ラインキープ悪。

前半25分。
ユーゴスラビアがオフサイドの違反。
テレビで見る限りオフサイドだが、副審の位置はラインより前すぎる。
ラインキープがおかしい。

後半5分。
オフサイドの合図。
テレビで見ても相当かなりあやしい判定。もっとも、いつも言うとおり「テレビで見れば。」なのだが。
しかし、そのときの彼のラインキープは明らかにダメダメ。


アナウンサー:
不可もなかったが、特別可もなかった。

セルジオ越後:
彼には言葉の壁があるのであんまり言いたくないが。
彼の話は凡長なだけで結局要領を得ない。同じ調子の多量の文節が長々と続いた挙げ句にいつも結論がいまいち不明確なので、長い話は聞くに耐えなかった。
母国語以外の言語でもっともなことを言おうとしてこういうことになる人は多い。あれなら逆に、短い文章をつなげたほうがよほど効果的だろう。
僕が人生で見かけた良い反面教師とも言える。
しかしそれ以上に、彼には競技規則への理解不足からくる不可解な発言が多すぎる。

日本テレビ:
というよりむしろ、あんなに競技への理解が不正確で競技規則を知らなくて日本語が苦手な人間を解説者として起用して平気でいる日本テレビのその神経のほうがよほど知れない。
セルジオ越後は90分間ほとんど解説の機能をなしていない。そういう解説者を使っていて、恥ずかしくないのだろうか?
フジテレビのほうが数段上だ。

前半17分。
アナウンサー。
「ストイコビッチにはこの試合に賭けるものがあるので、前回のJリーグ柏レイソル戦では大事を取って後半28分で退いています。」
この競技者のこの試合への入れ込み具合を象徴する感動的な逸話なのか、この競技者のクラブチームでのモチベーションの低さを象徴するあきれた逸話なのか、どちらにも解釈できてけっこう笑えた。
怪我をして退いた、という話だったが。
アナウンサーが長々といろいろ言っていたが、カタい事実は結局のところ、Jリーグの試合で後半28分に彼が交代した、ということだけだ。

前半23分。
小野の攻撃参加が少ないことに対しトルシェが不満を持っているという情報に対し、セルジオ越後は、
「小野は前回の試合で怪我をしているので、そのことを考慮してそのコンディションを見る必要がある。」
と指摘。前回の試合のことをよく覚えている。これはよかった。

前半45分。
セルジオ越後。
セットプレーのときに試合をよく止めてボールを蹴る競技者に何か言いに行く主審について、
「無駄だ。」
という趣旨のコメント。正しい。

後半14分。
ユーゴスラビア競技者に稲本倒されるも、主審からはお咎めなし。
セルジオ越後。
「もしもどこか早い段階でプレーが止まっていたら警告されただろう。」
という趣旨の発言。

第5条 主審
・警告または退場となる違反を犯した競技者に懲戒処置をとる。ただちにこの処置をとる必要はないが、次にアウトオブプレーになったときに主審はその処置をとらなければならない

警告に値するプレーだと主審が判断したなら、そのあとどんなにアウトオブプレーにならない時間が続いたとしても、次のアウトオブプレーのときに警告することになっている。
それがいつになろうと関係ない。警告を結局出さなかったということは、反則ではないと主審が判定した、そういうことである。
もっとも、この試合の主審の技量には相当の問題があったから、まさかとは思うが、本当は警告しようと思っていたのだがどの競技者の違反だったか忘れてしまった、という可能性もないとは言いきれない(笑)

後半23分。
セルジオ越後。
「せっかく5人交代枠があるのだから、全部使わなければ意味がないだろう。だから5人交代させるべきだ。」
そういうレギュレーションを決めたのは、トルシェではない。あえて90分試したい選手が複数いるかもしれない。どう使おうとトルシェの勝手だ。

・・・と思っていたら。

後半35分。
セルジオ越後。
「両チームの交代が多すぎて、チームとしての試合開始時の意図がまるで残っていない。」
試合開始時の意図が残っていないのは両チームの交代が多すぎるのが原因なのか。
だったら、やっぱり5人も交代させないほうがいいのではないか?

どっちなんだ?セルジオ越後?!

後半37分。
アナウンサー。
「ストイコビッチはフル出場です。」
セルジオ越後。
「当然、最後ですから。」
最後だという理由で当然なのか。
ユーゴスラビア代表にとって、この試合って何なのだろう?
セルジオ越後説をそのまま信じれば、日本も随分ナメられていると解釈できる。しかも現実にリードしている相手によって。

後半40分。
戸田、かな?距離の違反で警告された。
セルジオ越後。
「ラインが下がらないから、警告しても意味が無いだろう。」
と主審を批判。
そんなことはない。警告してもまだ下がらないなら、もういちど警告すればいいことだ。

後半44分。
日本、中山投入。
セルジオ越後。
「これは大分のお客さんにサービス精神で云々。」
どうしてそうやってすぐに田舎芝居に仕立てるんだ。他の発想はないのか?
トルシェがこれまでのキャリアのいつ何処でそういう選手起用をした?

・・・そして最後まで、テレビのどこからも競技者、審判の服装についての指摘はなかった。


その他。

後半26分。
森岡負傷。
フィールドに入った日本側チーム関係者がトランシーバーを使っているのが分かる。

後半44分。
稲本がゴールライン外においてあるペットボトルで水を飲む。
ペットボトルって、いつから許可されたんだっけ?
ちなみに、審判も試合中に水分補給をしてよい。

個人的には、主審はレッサーパンダに似ていると思った。

01/07/05


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