コンフェデレーションズカップ 日本-カメルーン

コンフェデレーションズカップ 日本-カメルーン


前回の日本-カナダ戦と比較すれば、このような試合は主審が非常に気を使う試合だ。

「身体能力は高いが集中力の欠けているチームが中から長ぐらいの縦へのフィードを連発し、体をつかってなんとかしてムリヤリ得点しにいこうとする」

という試合になると、ボールについていくのは大変だし、ボールの出所をあまり信頼しようとすると今度は簡単にボールを奪われてカウンターになって、その時に主審のポジションは遅れてしまう。
ボールの出所、受けどころでは押す、引っ張る、等のファウルが続出する。
それでいったんファウルの規準に競技者が不審を抱くようになると、悪質なファウルが連発するようになってしまい、たちまち試合のコントロールが難しくなってしまう。
競技者に焦りが生じてくればなおさらだ。

しかし、それを差し引いて考えても、この試合の主審のレフェリングには多くの疑問が残った。


最大に僕が問題だ、と感じたのは後半28分交代で入った中山が右サイド相手陣でボールを必死にキープしているときに、遅れてボールを奪いに来たカメルーン3番の選手が中山の背中を複数回に渡り、ボールを奪う意志の感じられないようなやり方でしつこく踏みつけたシーンである。

これに対して主審は通常のように笛で試合を止めてフリーキックで試合再開しただけであったが、明らかに疑問であった。

・反スポーツ的行為(警告)
・著しく不正なプレー(退場)

の、どちらかである。
難しいところだが、僕なら間違いなく警告はする。退場でも不思議ではない。
警告しなければ、本当はそういうやり方は競技規則には指示されていないのだが、口頭で厳しく注意する。


こういうプレーがあったときは、主審は(この場合側にいたのだから、副審も当然そうあるべきだが)そのプレーに関わった競技者の背番号、顔はよく確認しておく。
さらに同様の行為があれば「くり返し競技規則に違反する」ということで警告すべきケースにあたるかもしれないし、その後数回ぐらいのプレー間は、特に再度の違反、報復行為等も起こりやすい。

僕はどうしていたかというと、こういうときは、次のプレーのあとも、当該競技者には分からない程度に、ではあるが、しばらくしつこく指を差してどの競技者がいまどのあたりにいる、と、ボールに関係ないところでもだいたいのところは把握しておいた。そうしてムードが落ち着くまでは、次にそれらの競技者が何か起こさないか、と特別に注意していた。


判定に疑問を持ったのは、他に、

前半17分。
日本競技者(小野だったかな?)が、手前タッチライン付近でカメルーンの競技者にスライディングタックル。ボールはそのまま日本の競技者が触れることなくタッチを割って日本のスローインで再開したが、両足の裏を見せてのタックルだったので、おとがめなしなのはどうか、と思った。

後半44分。
鈴木が左前方でボールを受けて、ライン上から突破を図る。カメルーン競技者のタックルを受けたが、ボールはゴールラインを割り、コーナーキックで再開になった。
→カメルーン競技者は両足の裏を見せて、足を浮かせてタックルにいった。警告がでてもおかしくないプレー。その位置からのフリーキックで再開すべきであった。


この主審は、中盤でボールが動いているときはそれほど目立たなかったが、前線にボールが出てゴール前のシーンになったときにプレーに対し遅れる、というシーンが特に前半に多かった。

たとえば、前半7分の鈴木の得点シーン。
主審は縦に走ったが、エリアへの入りが遅い。ロングパスをダイレクトで受けるところまでは予想できたはずだし、あれだけの時間があってシュートの時点でエリアの入りにも到達できていないのは問題である。(このシーンでは、A2も得点機にボールから遅れていた)


彼のゼスチャーには競技者に伝わりにくいものがいくつかあった。

前半15分。
日本の競技者がシャツをひっぱられ、直後に中田(だったかな?)が彼が奪われ掛けたボールを奪う。主審は合図もなく、ノーホイッスルで試合を流した。
ここではアドバンテージを採用した、と大きくゼスチャーするべきであった。

(前半16分、今度は逆に、中田がファウルを取られたとき、アドバンテージをしっかり宣言して、プレーを戻した。これはよかった)

後半24分。
カメルーン陣地、複数の日本の競技者とカメルーン競技者が激しくボールを奪い合い、ボールを蹴りあった際、カメルーンの競技者が触ったボールがオフサイドポジションにいた日本競技者にそのまま渡りそうになった。すぐさま副審A2はオフサイドの違反を示す旗を揚げたが、主審は不採用。

→カメルーン側に大きくボールが流れたので真意は不明なのだが、カメルーン競技者がミスによりボールを後ろに流してしまったと主審が判断し、オフサイドではない、として不採用にしたとも考えられた。その場合、競技者にもオフサイドで試合は止めないと知らせるべく、A2に旗を降ろせ、と主審は合図すべきであった。
(オフサイドである、と見た上でただ単に流したのかもしれないが、それならそれで疑問)

後半45分、カメルーンゴール前。
カメルーン競技者に何らかのファウルがあったのか、と思わせるシーンで、主審は前方に両手をあげる。それがプレーを止めるという意味ではないと競技者が理解できず、いったん多くの競技者の足が止まった。テレビで見ていても、アドバンテージだったのか、ノーファールだったのかまるで判然としない。混乱を招くだけで何が言いたいのか分からない不可解な動作だった。


それでも参考になった点をいくつか上げると、

前半19分。
カメルーン競技者がボールを持ち、エリア内で稲本と1対1。このシーンでは日本から見てエリア右側の入りの部分での攻防だったが、主審はエリア外手前側10ydぐらいのところから歩きながらボール方向にまっすぐ近づきつつ、その様子を見ている。
1対1に対するポジショニングとしては、適切だという印象を持った。

前半25分。
エムボマが反則を受ける。主審はいいポジショニングであった。

前半43分。
カメルーンが日本側入ったところでファウルを受け、いったんはアドバンテージを採用したが、主審は結局プレーを戻した。プレーをどこまで戻したかはっきりさせるため、主審は足を止め、プレーを再開すべき場所を手で差し、すぐにその場からプレーを再開しようとしたカメルーン競技者を2度に渡って威厳を持って静止した。

後半19分、鈴木2点目。
主審の位置は、エリア外の右側からアークに向かってのウォーク。副審と挟んで見る適切な位置であったと思う。

後半43分。
左前に出たボールを中山がコーナーアーク付近でキープして粘る。
このシーンではボールキープだけと見たのか、主審はエリア横ライン中央ぐらいからややボールよりの位置で、ファウルがないかじっくりプレーを見ている。


その他:

前半24分。
日本の攻撃。相手エリア付近右側から中田が前に走り込んで来た森岡にパス。
森岡はそれをダイレクトで受けて、さらに右外からエリアに入って来ていた明神にパス。明神はボールキープしようとしたが、カメルーン競技者に両足の裏を見せた状態でタックルされ、ボールを奪われた
→両足の裏を見せてのタックルなので、「不用意に、故意に、過剰な力で」ということで直接フリーキックになる反則をとりたい気もするが、さすがにエリア内ではPKになってしまうし、取りづらいか。
先に指摘した前半17分の小野の両足タックルに対して何の処置も取らなかった以上、判定の一貫性、という意味では反則を取らなかったのは正しいとも言える。
あのぐらいは、本当に微妙なところだ。

前半27分、カメルーンのコーナーキック。
遠いアングルだったのだが、鈴木がクリアの際、手を使ったようにも見えた。
(テレビでははっきりしない)
主審の位置は、おそらく攻撃側から見てペナルティーアークとエリアの線の境界からやや入ったところ。

後半2分。
カメルーンが日本ゴール前でフリーキックのチャンスを掴む。
壁はやや10ydより遠いのではないか、という印象を持った。
(許容範囲だとは思う)

後半12分あたりから長いボールに対し、カメルーン競技者が競り合う際に押す、掴む等のファウルを細かく犯すようになった。
(対処が遅いので、どうなる?見物だ、と思っていたら、結局冒頭に挙げた中山へのファウルが起こった)

後半26分。
戸田が受けたイエローカードは当然。

後半38分のカメルーンの受けた反則は、足の裏を見せて高く上げた、「危険なプレイ」。

後半39分。
森岡が倒されたとき、日本側交代要員が準備完了。結局すぐに別の競技者と交代した。
このとき、交代が完了していないので、日本はいったん交代をするのを止めて、森岡の様子を見ることもできた。

後半40分。森岡のファウル。カードも出たっけ?
シャツを掴んだ、ということらしいが。
・・・まあ、仕方ないか。
このときのフリーキックも、壁は10ydよりやや遠い印象を持った。


副審:

主審についてあげたところでついでに指摘したほかに、

前半15分。
小野から鈴木へのパスにA2はオフサイドの旗を揚げたが、テレビで見る限り疑問。
(もっとも、テレビで判定するのは難しい)

前半41分。
A2がオフサイドの合図の旗を揚げるのが明らかに遅れた。

A2も、全体に試合に遅れ気味な印象があった。
とくに、ラインキープについては(はっきり言って不満だが)まあ指摘しない、としても、オフサイドラインよりさらに先にボールが出たとき、そのボールについていくのが明らかに遅い印象だった。
主審もそうだったが、ボールが動いたときの一歩目が遅い。体のキレが悪そうな印象であった。

前半ロスタイム。
コーナーキックが連発するか、と思いきや、結局ゴールキックになり、川口が蹴ったところで前半終了。ビデオが流れたときに確認できなかったが、A2はボールがゴールラインを割ったかどうか、ゴールラインの延長線上で確認していなかったために判断に自信がなかったようだ。多少はやむを得ないが、ポジショニングがあまりにも遅れていたのではないか、という印象を持った。

後半41分。A2に注目。
オフサイドの違反はなかったという合図。手に持った旗の模様が主審に見えるように真下よりやや前方上向きに旗を向けて持って走っている。
→オフサイドの違反がない、ということを強調するために使うよくあるシークレットサインのひとつ。他に、旗を持たないほうの手を前に伸ばして走る、というのもよく使われる。

(旗が目立つのが好きでないので、僕が主審をやるときは後者を採用するか、あるいは何のサインも出さないように打ち合わせしていた)


日本代表は、前半30分すぎから、カナダ戦のように動きが遅れだすシーンが目立つようになってきた。
最前線のプレスはいいのだが、中盤でボールをもたれ、そのままズルズルと消耗していくという時間帯だ。しばらくして前でよく機能するようになったので自然に解消されたが、ああいう時間帯がどの試合にもあるようだとちょっといけない。

しかし、カメルーンが途中からザルザルだったことを差し引いても、日本の攻め手が多く、見ているほうはおもしろい試合だった。

中田は前回の試合でひっかけた足が悪いのか、それほどのパフォーマンスではなかったと感じた。

川口はよく集中している。ボールをよく見ている、という一言につきる。
それにひきかえ、2点目の失点をしたカメルーンのGKは、シュートのときに足が揃っていなかった。
しょうもない失態だったな。

鈴木はすごかった。ストライカーは、常にああいう目であってほしい。


テレビ:

試合前のアナウンサーのコメント。
「アフリカチャンピオンが日本に襲い掛かります!」
こっちも仮にもアジアチャンピオンだ。この間のオリンピックでは、所詮オリンピックとは言え、アフリカ勢にしっかり勝利している。
「襲い掛かる」とは何だ?ホームだぞ。ホームでやるんだから、もっと強気なコメント出せ。もっと日本代表に期待しろ。

前半27分のカメルーンのコーナーキックで鈴木がハンドしたのではないか、というカメルーンの複数の競技者からの主審へのアピールがあった。

国際映像を作っている以上、ホームチームの競技者が重大なファウルを犯したかもしれない、ということであっても、別アングルからの何が起こったのか分かるような映像を流す義務が当然フジテレビにはあったと思う。
サッカーの中継でそんな生やさしいことしていると、世界は納得しないぞ。

前半終了時、アナウンサーのコメント。
「なんと、日本が1点を奪っています!」
大騒ぎするようなことではない。その前の西澤のシュートも当然得点になっていても不思議ないようなものだった。

試合終了後、アナウンサーのコメント。
「日本、大金星です!」
ホームだろう。勝って当然だとまでは言わないにしても、「大金星」とは何だ?もっと期待しろ。
カメルーンに勝機がまるでなかった、とまでは言わないが、2-0だぞ。得点機は、日本にもっとあった。
あんまりおまえが「大金星、大金星」とうるさいから、解説者まで、
「そのとおりです。」なんて言ってしまったではないか。
なんか、よほどの大事扱いしたいらしいな、とあきれた。

試合後のサマリーで、シュート数が
「カメルーン17、日本12」と出ていたが。
「シュート」の規準って、難しいものだな、といつも思う。
得点の可能性がそれなりにあるシュート以外、数えても発表しても混乱を招くだけだと思うのだが。
僕の規準なら、カメルーンのシュートなんて数えるほどしかなかったぞ。

01/06/03


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