「これまで、タイムマシンに乗って未来からやってきた人はいなかった。だから、将来タイムマシンが完成して我々が自由に時間の間を行き来することはできないはずだ」
スティーブン・ホーキングがそう言うのを聞いて、「そりゃ、おかしいでしょ。地球の上で考えてるからそんな発想なんだ」と思った人がいる。
彼の主張はこうだ。
地球は、太陽の周りをものすごい速さで公転している。太陽は、銀河系の中をもっとすごい速さで公転している。銀河系も、アンドロメダ星雲の方にものすごい速さで移動している。宇宙自体も動いている。そんな中、ほんの1ヶ月くらい前の今の場所に戻ろうとしただけでも宇宙のまっただ中じゃないか。
彼の計算によると、1ヶ月前に戻れば地球から10億500万4800km、1年前に戻れば121億6000km地球から離れたところに来てしまうらしい。
だから、未来にタイムマシンができたって、今この時点の地球にやってくるのはとても大変なことなんだ。
彼の発想はそこで終わらない。
それじゃ、もしもタイムマシンが完成したら?
宇宙に物質を運ぶには巨大なエネルギーが必要だ。実際、ロケットが使うリソースのほとんどは大気圏からの脱出に費やされている。
でも、もしもタイムマシンが発明できたら、ほんの1秒未来か過去に行くだけでも何千キロも離れた宇宙に突然出現することになる。それって、あっという間に宇宙に出ちゃうってことじゃないか。
そんな研究が、NASAなども取り組む宇宙エレベーター建設の研究にも活かされたりする。
- - -
アニリール・セルカンは、1973年ドイツ生まれのトルコ人。
イリノイ工科大学建築学科卒業、プリンストン大学元講師(数学)、ケンブリッジ大学物理学部特別科学賞受賞。東京大学大学院博士課程卒業。
これだけだと普通の(?)一流科学者風だが、ぜんぜんそんな人ではない。
スキーで国代表になったこともあるトルコ人初のNASA宇宙飛行士で、8カ国語を話し、3つの古代言語も用いることができる、要するに多才な人なのだ。
(ちなみに、氏のブログはなんと日本語!! http://blog.anilir.net/ )
小学校の頃、ドイツの科学コンテストで入賞し、それがきっかけでスイスの寄宿学校に行くことになる。
結局寄宿学校はボヤ騒ぎがあって中退することになってしまうのだが、今度はその当時の仲間たちだけで全長37kmの銅線を地元のサッカー場にまきつけた巨大コイルでタイムマシンを作ろうとし、地元メディアにも話題にされるなか実験を行ってみたりもする。
- - -
本書「宇宙エレベーター」は、そんなアニリール・セルカンの、気軽な科学エッセイというところ。
話の内容も、宇宙とは、次元とは、時間とは、原子とはといった現代科学が探求する問題を扱ったものから、彼の経歴であげたような少年時代の巨大な科学実験の思い出、古代の記録から考える現代科学への考察まで、非常に多岐にわたる。
池の鯉から見た世界ってどんななんだろう。サンタさんが一晩で子供にプレゼントを渡し切るには、どういった技術を活用すればよいのだろうか、そんなことについての想像なんかも交えながらされていく世界観には思わず引き込まれる。
古代史が好きだという方にとっても、シュメール人の石版やインドの聖典を自ら読み解きながら当時の人々の高度な知識や技術、そして過去の「最終兵器」について考察する下りは、古代語を自由に扱う現代の超一流科学者としての視点で書かれており、非常に読み応えがあるものと思う。
数式は出てこないが、図は多い。文字数も少なく、とても楽しく読める。
決して難しい科学書ではなく、さーっと読めば1時間もかからないような本なので、ぜひみなさんにお勧めしたい一冊だ。
宇宙エレベーター アニリール・セルカン
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4479391398/konesweb0f-22/

最近のコメント